スラムダンクを読み返せ

いつの間にか桜が散り、新緑の季節となってきました。あちこちでツツジが咲き誇っています。
時には暑く、時には寒くとまだまだ寒暖の差がある日が続いているのですが皆さんはいかがお過ごしでしょうか?

4月に入り新学期が始まったということであちこちで真新しいランドセルや制服姿で学校に通われる生徒さんもよく見かけます。
つまづかないように、そして、つまづいても自分の力で立ち上がれる力を養ってほしいですね。
そして、今回のお話は「つまづく」つまり挫折のお話をしてみたいと思います。

さて、みなさんは『スラムダンク』というマンガをご存じでしょうか?

知らない方のためにお話しますと、1990年代の少年ジャンプに連載された井上雄彦氏によるバスケットボールマンガです。
連載終了からもう30年近くが経つ古いマンガなのですが、未だに名作として語られ、最近でも映画化の話が進んでいるほどだそうです。

話の基本としてはジャンプ黄金期のマンガらしく才能の片りんは見せつつもバスケは全くの素人の主人公(桜木花道)が個性豊かな仲間と衝突しつつも、強豪ひしめく神奈川県の中で全国優勝を目指していくという、上に上に昇っていくお話です。最後はどうなるかというとネタバレになってしまうので未読の方はぜひお読みになってほしいのですが、その中で実質1話しか登場しない人物のエピソードがあります。

谷沢龍二。
2メートルを超える体格と体力に恵まれ、将来を嘱望された大学生の選手でした。
ただ彼は監督とそりが合いませんでした。その監督は作中の主人公である桜木花道が所属している湘北高校の監督の安西先生の若かりし頃なのですが、大学の監督時代は非常なるスパルタとガチガチのシステマティックな管理による指導でありました。厳しく、しかも基本ばかりの地味な指導なので才能ある谷沢はこんな感じで反発を覚えます。

谷沢「くそ~~冗談じゃねぇ!!
大学入ってまで なんでこんな軍隊みたいなことさせられなきゃならねーんだ!!
練習も妙に基礎的だし」

谷沢「このチームはオレには合わねぇ!!
もっとフリーランスにプレイできる
チームじゃないと俺の持ち味がつぶされちまう
!!」

谷沢「やめてやる!!
オレがやりたいバスケはここにはねえ!!」

谷沢「アメリカだ!!
俺があこがれたアメリカのバスケットボールに
挑戦するときが来たんじゃないのか!?」

谷沢「アメリカで俺のプレイがどこまで通用するか・・・」
すぐには通用しなくてもいい
でも1年か2年・・・
本場のバスケにもまれれば きっとデビル(※安西先生のこと)の
想像も及ばないくらいの選手になれるはずだ!!」

谷沢「いや絶対になってみせる!!
自信はある!!
アメリカで俺の才能を試すんだ!!」

そして谷沢はほとんど誰にも相談しないままバスケットの本場であるアメリカ留学をしてチームを去ってしまいます。
安西は落ち込みますがそんなある日、谷沢の友人に一本のビデオが送られてきます。

それを見た安西は谷沢の姿に愕然とします。ネットスラングでもおなじみのあの言葉が出るシーンです。
そう、谷沢は能力に任せたプレイで全くと言っていいほど進歩していなかったのです。

「走れる2m選手といってもそれは日本でのこと
自分より大きくて速い選手を彼は何度も目の当たりにした
さらに高校時代能力に任せたプレイで 基礎をおろそかにしていた彼には
自身が期待していたほどの急成長は望むべくもなかった」

そして挫折した彼は悲劇の結末へと向かい、エピソードは終わります。

     *   *   *

さて長々と引用したのは皆さんに次に書くエピソードと類似点を思い起こしてほしいからです。

これはある飲食店の話です。
飲食店という業態は多くのアルバイトで成り立っています。
そして飲食店のアルバイトというものはおしゃれで華やかというのは例外的で忍耐を要するお仕事です。
しかもアルバイトですと、目に見える形で大きなスキルアップにはつながりにくい職種です

さて、その飲食店も例外にもれず多くのアルバイトの学生を雇っていたのですが、ある学生さんはこう言ったそうです。
「大学卒業後デザイナーとしてすぐにフリーランスで働きたい」と。そして、その学生さんは「飲食店は自分には合わない」と言って早々に辞めると、新たなデザイン会社にアルバイトを変えました。それ自体は仕方ないことですが、レストランで研修用に貸していた書籍を返さぬままにそのまま音信不通となったそうです。

また、ある学生、彼女は情報系の学生だったそうで、当然自分の専門と飲食店は方向が合いません。そして徐々に反発を覚えていきます。そしてその飲食店を辞めることになるのですが、今までの不満とともに捨て台詞をぶつけるようにこう言ったそうです。「大学を休学してベンチャー企業で1年間アルバイトをする」と。確かによくある話かもしれません。ただ、その学生さんは上長が命じる日報を書くことを拒否し、指示を無視するなど典型的な報告、連絡、相談ができない人だったそうです。

     *   *   *

さてスラムダンクの谷沢のエピソードをもう一度思い起こしてほしいのです。
谷沢はもちろん架空の人物ですが、後述の学生さんは現実の存在です。ただ自分に合わないと切り捨て、そして一見すればキラキラとする場所へ逃避した谷沢と何が違うのでしょうか?

谷沢のエピソードは大変に示唆に富んでいます。そして、こう締めくくられています。

谷沢「バスケットの国 アメリカの――
その空気を吸うだけで
僕は高く跳べると
思っていたのかなぁ・・・」

この「バスケットの国 アメリカ――」を「自分の目指す何か」に置き換えて考えることができるかどうか、その力を持てるかどうかは非常に大切だと思います。

スラムダンクが連載されていた当時の少年ジャンプは少年マンガではナンバー1ですし、そこで連載を勝ち取り、しかもヒットに結びつけることは難しいことは言うまでもありません。週間マンガの制作スケジュールは超がつくほど多忙ですので綿密な取材はあまりできないものです。そのため週刊少年マンガは若さと勢いで描くものですから作者の意図よりも無意識が反映されやすいジャンルです。もしかしたら井上雄彦氏はマンガを描く中で、彼のアシスタントの中にこれはと思う才能を持っていた人が挫折していったのを目にしたのかもしれません。だからこそああいったエピソードに結びついたのかもしれません。もちろんこれは全くの想像なのですが。

人は見た目の華やかさに目を奪われ、基本をおろそかにしてしまいがちです。
ですが、基本が身についていなければ才能があっても花は咲きません。
仮に咲いたとしてもその大きさは小さなものになってしまうのです。

飲食店を辞めていった彼ら、彼女らは、はたしてそのことに気づくことができるでしょうか?

表層的な技術やスキルも重要です。
しかし、やはり基本を大切にしたいですね。
私たちが教えるのは子供たちですからなおさらです。

と・・・少しまとまりに欠けましたが、今回はこれまでとします。
また次回にお会いしましょう。


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